「宮澤・レーン事件」ってご存知でしょうか? 実は多くのひとが忘れかけ、多くのひとが知らずにいるのではと恐れます。
1941年(昭和16年)12月8日、日本が太平洋戦争を仕掛けた日に、旧・北海道帝国大学(現・北海道大学=以降、北大)予科の英語教師ハロルド・メシー・レーン、同英語教師ポーリン・ローランド・システア・レーンの夫妻と、その教え子の北大生・宮澤弘幸さんらが軍機保護法違反で逮捕され、有罪とされた冤罪事件です。
冤罪であることは、最高裁に埋もれていた大審院(現・最高裁に相当)の判決等を探しあて、あわせて四十五年の歳月を掘起こして得た事実との突き合せで論証し尽くした弁護士・上田誠吉さんらの働きによって解明されており、レーン夫妻については戦後ほどなく、北大当局が再び英語教師として迎え入れたことで実質的に名誉回復がなされています。
だが、宮澤弘幸さんについては、そのような機運が起こる前に、獄中の想像を絶する衰弱と結核罹患によって、戦後に釈放後、療養かいなく死亡しています。有意の27歳にして、拷問に続く事実上の獄中死といえます。
ひとは辛い記憶や嫌な記憶はひと思いに忘れたくなるものです。実際、本当に記憶から消し去ってしまう症例さえあると臨床医学は明らかにしています。
しかし、ひととして絶対に忘れてはいけない記憶も厳としてあります。「宮澤・レーン事件」はその一つです。
それは国家権力が起こし、国家の名で犯した非道な冤罪だからです。有無も言わさず人としての尊厳を奪い、可能性を奪い、遂にかけがえのない命までをも奪っているからです。
そのうえスパイ冤罪は本人に止まらず、家族親族を壊し、友人知人を壊し、人間関係を壊し、社会信義を壊し尽くします。
「あいつはスパイだ!」
「裏切り者だ! 国賊だ!」
「追い出せ!」
「スパイの子と遊ぶな!」
一度烙印をおされると、弁明も反論も通りません。それまで和やかだった人間関係に謂れなき侮蔑と猜疑と保身をゆすり起こし、集団いじめの構図を強要するのです。いえスパイ呼ばわりそのものが冤罪をつくるのです。
だから忘れてはいけません。ひとは忘れると同じ事を繰り返します。繰り返してはいけません。決して繰り返しはしないという強い意志と智恵を確実にしなければいけないと切に思います。
過日、いまは宮澤弘幸さんのたった一人の肉親となった、85歳になる妹の秋間江美子さんが宮澤弘幸さんの北大時代の溌剌を写し撮ったアルバム一冊を携えて北大を訪れ「冤罪の無念を決して忘れないで」との願いを込め、真心を込め、贈りました。
事件当時、北海道帝国大学は教え子のために何の弁明もしてくれないどころか、大学として関わることを拒否し、一片の事情確認さえなく学籍簿の上での退学処置をとりました。その怨念を超えての願いに、現大学当局は「(贈られたアルバムを)閲覧、公開展示等を通じて広く紹介し、本学の歴史の中にしっかりと位置づけていく」と受け止めています。
その先には、必ず冤罪による退学処置を撤回しての名誉回復と顕彰がなされるものと信じています。そのことが国家による過ちを二度と繰り返さない一歩となるからです。
アルバムには70年余の星霜を超えて何度も何度もめくられ、涙にくれ、怒りに戦いた跡が残されています。わたしたちは、この秋間江美子さんと、その家族が負ってきた積年の思いを同じ思いとしてゆるぎなく記憶し、明日に生かす手立てを考えるために、「北大生?宮澤弘幸『スパイ冤罪事件』の真相を広める会」を結成しました。
1、秋間美江子さんの願いを実現するために、北海道大学に正式に退学処分の取り消しと、唯一の家族である美江子さんに明確な謝罪を表明させる。美江子さんが高齢のため、この実現を最優先課題とする。
北海道大学への申し入れの内容・時期・方法については、1941年12月8日朝の宮澤弘幸・レーン夫妻逮捕以降、北海道大学がとった態度を精査し、その個別の事例すべてについて、北海道大学の見解を糺す。申し入れは秋間美江子と連名で文書で行う。回答には期限をつける。
2、秘密保全法阻止の活動は、長期的な運動になる。そのために、宮澤弘幸スパイ冤罪事件を多くの人々に知ってもらう活動を粘り強く展開する。
1、会則の目的に賛同し、意気に感じた人々の自主的・自覚的な運動参加を期待する。そのためにも、山野井、山本「YYコンビ」代表を先頭に、楽しく、愉快に、息長く活動を継続することを目指す。
2、活動の発展・継続を保証する財政の確立を目指す。会費のみでは維持できないので、幹事の自己負担は避けられないが「無理はしない。出来る範囲」を原則に協議して推進する。
3、「スパイ冤罪『宮澤・レーン事件』の真相を知って欲しい」タイトルのパンフレットを作成し、宣伝するとともに、この販売を通じて活動資金確保を目指す。
4、コロラド在住の秋間美江子さんを激励する。
2月23日(土)、新宿・常圓寺で、「宮澤弘幸追悼・顕彰 秘密保全法を考えるつどい」を開催する。
「スパイ冤罪『宮澤・レーン事件』の真相を知って欲しい」のタイトルでパンフレットを作成し、宣伝とともに、販売して活動資金を確保する。1部500円、3000部
本会の目的に賛同する方々に入会を呼びかける。
下記口座への入会金(1口1000円以上)払込みをもって入会とする。
<入会金払込み口座> ゆうちょ銀行 払込み口座 00130―2―761349 福島 清
「北大生・宮澤弘幸『スパイ冤罪事件」の真相を広める会」結成・発足。
2013年1月29日結成・発足
第1条(名称)本会は「北大生・宮澤弘幸『スパイ冤罪事件」の真相を広める会」とする。
第2条(目的)本会は、北海道大学の学生だった宮澤弘幸さんが軍機保護法(スパイ罪)で投獄された冤罪事件を糾し、北海道大学に退学撤回による名誉回復を求めるとともに、二度と国家による非道が起こらないようにするため秘密保護法の立法策動を阻止することを目的とする。
第3条(所在地)本会は、事務局を千代田区労協事務局(千代田区神田神保町3-2)に置く。
第4条(事業)本会は、第2条の目的達成のために以下の事業を行う。
1、北海道大学に宮澤弘幸さんの退学撤回による名誉回復と全資料の公開等を要請する。
2、非道を繰り返させないために「秘密保護法」阻止の運動と連携して活動する。
3、宮澤弘幸『スパイ冤罪事件」の真相を究め広く社会的に公開・宣伝する。
4、戦時中の冤罪を闘い抜いた宮澤弘幸の生涯を顕彰し、北海道大学をはじめ関係者及び広く関心を持つ人たちと連携して必要な行動を組織する。
5、その他目的達成のための活動を行う。
第5条(会員および入退会)本会の目的及び本会則に賛同する方(個人・団体)を会員とし、入退会は自由とする。
第6条(入会金及び維持会費)本会の入会金は1ロ1000円とし、上限は設けない。維持会費は主旨に賛同する方々のカンパ等とする。
第7条(代表・幹事・事務局)本会は代表を置き、その下に幹事・事務局を置く。
第8条(方針等の決定一目的に基づく具体的な事業等は、代表・幹事・事務局で構成する幹事会で決定し、郵便・メール・FAX等で会員に周知徹底する。必要に応じて、「会報」を発行するとともに、会員総会(持ち回りも可)を開催して、方針・活動報告の承認を求める。
代表
山野井 孝有(東京)
山本 玉樹(北海道)
幹事
大住 広人(京都)
奥井 登代(北海道)
刈谷 純一(北海道)
北明 邦雄(北海道)
坂本 和昭(北海道)
寺沢 玲子(東京)
橋本 修二(北海道)
事務局長
福島 清(東京)
同次長
根岸 正和(北海道)
水久保 文明(東京)
事務局
千代田区労働組合協議会(千代田区労協)
101-0061 東京都千代田区三崎町 2-19-8 杉山ビル2階
TEL:03-3264-2905 FAX:03-6272-5263